最高裁判所第二小法廷 昭和54年(オ)18号 判決 1982年4月23日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人堀嘉一の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。また、原判決は、所論引用の判例に抵触するものではない。論旨は、採用することができない。
上告代理人松田直喜の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし、正当として肯認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
上告代理人山本耕幹の上告理由第一及び第二について
所論の点に関する原審の判断は、原判決の説示に照らし、肯認することができないものではなく、その過程に原判決の結論に影響を及ぼすような違法があるとは認められない。論旨は、採用することができない。
同第三について
譲渡担保権者が目的不動産の所有権を取得したとして、右不動産を第三者に譲渡して所有権移転登記がされた後は、譲渡担保設定者は第三者による所有権の取得を争う余地がないと解するのが相当であるから、論旨は、ひつきよう、原判決の結論に影響を及ぼさない部分についてその不当をいうものにすぎず、採用することができない。
同第四について
譲渡担保権者は、債務者が弁済期に債務を弁済しない場合においては、目的不動産を換価処分し、またはこれを適正に評価された右不動産の価額から、自己の債権額を差し引き、なお残額があるときは、これを清算金として債務者に支払うことを要するものと解すべきであるから(最高裁昭和四二年(オ)第一二七九号同四六年三月二五日第一小法廷判決・民集二五巻二号二〇八頁参照)、債務者は右債権について清算がなされるまではこれを弁済して目的不動産を取り戻すことができるが、債権者が譲渡担保により目的不動産の所有権を取得したとして、右不動産の所有権を第三者に譲渡して所有権移転登記がされたときは、右清算がなされていない場合であつても、右不動産の所有権が譲渡担保権者を経て第三者に移転するものと解するのが相当である。したがつて、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、所論の点に関する原審の判断は、結局、正当として是認することができる。論旨は、ひつきよう、原判決の結論に影響を及ぼさない部分の違法をいうものにすぎず、採用することができない。
(裁判長裁判官 木下忠良 裁判官 栗本一夫 裁判官 鹽野宜慶 裁判官 宮崎梧一 裁判官 大橋 進)